SOHOトラブル座談会「事例4:契約の突然の打ち切り<翻訳業務>」
ある企業が原稿制作の在宅仕事を募集していました。チラシには「在宅勤務・基本固定給および仕事量に応じた成果給」との表記。この採用試験を受け、採用通知が届き、しばらくして説明会が開催され、主に業務内容の説明がされました。時間が固定ではないのに固定給を設定されているのはおかしいと思い、質問をしたところ、仕事量がそのくらいになる、収入もそのくらいになる、との回答。担当者がいない、ということで、それ以上の詳しい説明はできないとのことでした。
納品をしても報酬基準は明示されませんでした。入金時にようやく査定金額が表示されました。「あとから査定されることには、他の人からも不満はないですか」、と聞いたところ、あいまいな返事。次の月も、納品物をあとから査定された額で、支払がされました。翻訳には表現の微妙な幅があるので、その検収の難しさを考えると、こんなものなのかな、と釈然としないままに仕事を続けました。
3ヶ月目に、新たな業務の為のトライアルの連絡がありました。しかし、これを合格した3日後、同社の別の部署から今後の発注の可否は精査中である旨、文書が届きました。その後、トライアル内容が不適切であった、とまた文書が。自分としては一度合格したトライアルに「不適切」といわれる根拠に、納得がいかなかったので問い合わせましたが、また形式的な書類が送られてきた。
アルバイトか、請負か。電話で「これは解雇ですか」と聞いたが、応えませんでした。
伺った限りでは、継続的な請負契約という印象が強い。請負契約とは、仕事と引き換えに報酬を得るもの。雇用関係では、労務の提供に対して賃金が支払われます。この場合、労務ではない、仕事の完成度を評価される仕事で、請負契約に相当する形態。しかしこれは1回ごとに完結するのが通常。継続的な請負契約では、民法上直接定められてはいないが、契約の打ち切りには、予告期間を定め、正当な理由を明示しなければなりません。この場合、そもそも契約内容がはっきりしていない。あなたは、それをきちんと確認しようと努めていた。しかしすべてが法律に触れない程度に抑えられており、契約違反などの法律的な根拠がないので、なんら請求はできないでしょう。
残念な結果になってしまいましたが、今後は、極力契約書などの証拠を残し、契約条件の確認と意思疎通ができる発注者との取引に注力された方がよいでしょう。